MDF配電盤って何に使われているの?

集合住宅で光回線の新規加入申し込みをすると、業者からこう言われることがあります。
「MDFのフタを開けるように頼んでおいてください」

管理会社や大家さんに言って、回線工事をする当日にはMDFというところのフタの
鍵を開けておいてもらうことになります。

そもそもMDFとは何をするところなのでしょうか?
鍵を開けておく必要についても確認してみることにしましょう。

MDF配電盤というのは間違い

たまに見かけるのですが、「MDF配電盤」という方がいます。
確かに語呂もいいので使う人も多いのですが、これは間違いです。

まずMDFは「配電盤」ではありません。
電線を分岐させるものではないのです。

MDFとはMain Distributing Frameの頭文字を取っている略称です。
日本語に訳すと「主配線盤」ということになります。

電線ではなく、通信関係の配線を集めておくところです。
ここから必要に応じて、必要なところに通信回線を分配することになります。

一般家庭でも使われることがあります。
でも多く利用されているのは集合住宅やオフィスビルです。

特に大規模なマンションなどではMDFからの配線を更に細かく分けるための
IDF、Intermediate Distribution Frameが置かれる場合も多いです。

IDFは中間配線盤というもので、やはり通信関係の配線を制御するために
マンションの各階層に設置されています。

このようにMDFの和訳が「主配線盤」なので、これに配電盤という言葉をつける
というのは基本的にありません。

たまに見かけることもあるのですが、日本の通信関係の法令上では「主配線盤」と
表記されています。

MDF配電盤と表記されることはないので注意しましょう。

配電盤は電気を制御するために必要なもの

では「MDF配電盤」と一緒にされることが多い「配電盤」とはどんなものなのか。
こちらも確認しておくことにしましょう。

配電盤は、簡単に言ってしまえば「電気を配るためのもの」です。
多くの場合に監視用メーターが付いています。

詳しく言えば、高圧受電設備から出てきた電気を受け取ります。
受け取った電気を更に各部署に分けるために使われるものです。

専門分野ではキュービクルと言われる、MDFとは別のものになります。

ちなみに配電盤で分配された電気は「分電盤」に送られます。
この分電盤から、各部屋のコンセントや照明、モーターなどに分配されます。

使われ方を見ると、確かにMDFと配電盤は同じように使われているのですが
扱っているものがそもそも違います。

配電盤では電気、MDFでは通信回線を制御することになります。
基本的には違うものなので覚えておきましょう。

MDFも配電盤も同じところに置かれることが多い

MDF配電盤、という言葉が使われることになった理由として考えられるのは
どちらも同じところに設置されることが多いためかと。

MDFは集合住宅、マンションに置かれることが多い設備です。
そして配電盤は基本的にどんな建物でも配置されています。

MDFを配置するのは基本的に共用部分です。
つまり最初から共用部分にある配電盤の近くに設置されることも多いのです。

特に大型のマンションなどでは地下室に多くの設備が集まっています。
その中には電気と通信の設備をまとめて設置している、という場合も。

この場合に、その部屋が「MDF、配電盤室」という名称になることも多いのです。
これをまとめて考えてしまうという方も多い、ということでしょうか。

MDFは通信回線を集中させて、必要なところに分配する機材

MDFと配電盤の違いがわかったところで、MDFとは一体何なのか。
これについて詳しく確認していきましょう。

先ほど簡単に説明しましたが、MDFとは主配線盤のことで通信回線を集中して
必要なところに分配するための機材です。

以前は基本的に通信といえば電話回線で、日本国内では全てNTTが管理をしていました。
つまりNTTからの回線を引き込んで、必要なところに分けるために使われていました。

現在では通信といえば光回線などのインターネット通信もあるのでNTT専用ではなく
色々な会社の通信回線が集まるという印象ですね。

電話線もインターネット回線も、同じようにまずはMDFに引き込みをします。
建物に設置する通信回線はこの1本だけ、ということになります。

そして引き込んだ通信回線を、集合住宅なら契約している各部屋に分配をして
それぞれの部屋で使えるようにするための機材というわけです。

一戸建ての場合でもMDFがあれば、そこから各部屋まで配管が行われているはず。
MDFにルーターを設置して分配すれば、各部屋にインターネット回線を設置できます。

無線LANルーターを使えば、離れた部屋からでもインターネット接続は可能ですが
安定性という面では有線LANでの接続がおすすめです。

最近では一戸建てでもこんな使われ方をしているMDFです。

光回線を分配するのにMDFはとても都合がいい

古い集合住宅の場合ですが、MDFを使って光回線の引き込みをする場合にとても便利
という意見が多いのです。

それは以前のアパートやマンションでは光回線を事前に設置していないこと。
そのために回線の分配に電話回線を使うために、MDFがかなり便利だったのです。

現在の光回線、NTTが提供するフレッツ光では集合住宅の光回線分配方式として
3種類を使うことができます。

「VSDL方式」と「光配線方式」、「LAN配線方式」という3種類の方法でフレッツ光は
分配されています。

この中で「LAN配線方式」は現状ほとんどの集合住宅で使われていません。
最初からLANケーブルを配線している集合住宅というのがないのです。

建築当初からインターネット回線のことを考えて、壁に配線をするなら光回線を
使う事が多いのです。

わざわざセキュリティ面での弱点があるLANケーブルを使うマンションのオーナーは
多くありません。

そして以前からあるマンションの場合、電話回線を使うVDSL方式の分配がとても便利に
使うことができるというメリットがあるのです。

VDSL方式は電話線を使うのでMDFから直接分配が出来る

先ほど説明したとおり、光回線も通常の電話回線と同じく集合住宅ならMDFに引き込まれ
そこから契約している各部屋に分配されることになります。

そしてVDSL方式で光回線を分配する場合には、分配する回線にMDFにある
電話回線を使うのです。

MDFに特殊な機材を置いて、光信号をアナログ信号に変換します。
このアナログ信号を、すでに各部屋まで設置している電話回線で分配するのです。

MDFには元々、電話回線も一緒に引き込みをされています。
どの電話線がどこの部屋に行っているのか、全てわかるようになっています。

新しい回線を設置する必要もなく、すでに光回線が導入されているならMDFでの
切り替えだけでインターネット回線が開通するということも多くあります。

ただし契約した人は自宅内で、電話線とインターネット回線を分岐させるための
スプリッタという機材を取り付ける必要があります。

更にインターネット回線を使うにはアナログ信号をデジタル信号に変換するための
VDSLモデムを自分で設置することになりますが。

古くからある集合住宅ではコストの関係からもVDSL方式を導入しているところが
多くあります。

建築後に光配線方式にすることも出来る

ちなみに光配線方式は最初から壁に光ファイバーケーブルを埋め込まなくても
建築後に配線することも出来ます。

一度MDFに引き込んだ光回線を、外壁などから各部屋に分配をします。
部屋への引き込みはエアコンダクトの配管などを利用します。

ただしこの場合だと外壁に傷をつける可能性が高くなります。
それにエアコンダクトの位置関係によっては引き込みに使えないという場合も。

その場合は別の引込できるところを探しますが、最悪の場合は壁に穴を開けて
光ファイバーケーブルを引き込むことになります。

当然壁に穴を開けるという場合には一度工事が中断されます。
管理会社や大家さんに穴を開けていいのかの確認が必要になるので。

ちなみに賃貸住宅の場合、こうやって引き込みをした光コンセントが残っている
ということが多くあります。

これは光回線の工事が、原状回復に含まれない事が多いためです。
大家さんとしても後から入居する人がまた光回線を使う可能性を考えているようです。

状況によっては撤収を求められることもありますし、逆に大家さんから「残してくれ」と
頼まれる場合もあります。

光配線方式で建築後に配線をした場合には、撤去時にその回線をどうするのか
大家さんや管理会社と相談をしましょう。

MDFは盗聴などの問題があるので通常鍵がかかっている

新しく光回線などのインターネット回線の契約をする場合、集合住宅なら特に
MDFの鍵を開けておいて、と頼まれるはずです。

ここまで説明したのでわかりやすいと思いますが、MDFには通信回線が集まっています。
今ではインターネット回線もここで分配されることになります。

つまりMDFが誰でも簡単に中を見られるようでは、そこに集まっている通信回線から
簡単に盗聴が出来てしまうのです。

電話回線はもちろん、最近ではインターネットを使った通販なども多くなっています。
この場合はクレジットカード番号などもネットの情報として通信されています。

通販サイトなど各サイトのセキュリティは十分に高められているのですが
それ以前に自宅から盗聴されていては個人情報が漏れまくる、という状態に。

そのためにMDFには通常鍵がかけられていて、誰でも簡単に中を見ることが出来ない
という状態になっています。

それに大規模なマンションでもない限り、MDF室など特別に作られていることはなく
普通は壁にボックスが張り付いているだけです。

セキュリティを考えても普通は鍵をかけている、というのが一般的かと。

MDFの鍵の管理は基本的に管理人

ではMDFの鍵を開けておいてもらうにはどうすればいいのか。
基本的に共用部分の鍵の管理は管理人が行っているはずです。

大家さんが直接管理をしている物件なら大家さんが鍵を持っています。
また建物によっては管理人室にMDFがあって、そこで作業をすることになります。

つまり多くの状況では管理人がMDFの鍵を管理しているので、工事が始まる前に
管理人に話を通しておくことが必要になる、ということです。

通信回線の工事をするのに管理人に話をしない、という人はまずいないので
どこかのタイミングで話すことは出来るはずです。

特に賃貸の場合は許可が必要になることが多いので、あまり問題はないかと。
分譲マンションの場合は、管理会社というよりちゃんと管理人に話をしましょう。

管理会社から管理人に話が通るまでに時間がかかることも考えられるので
出来れば直接管理人にインターネット回線設置の報告をおすすめします。

NTTの工事業者が鍵を持っている場合もある

ただし管理人の報告や立ち会いが必要ない、ということもあります。
それはNTTの工事業者がその建物のMDFの鍵を持っている場合です。

基本的にMDFの中を工事する場合、鍵を管理人が開けて工事の間は管理人が
立ち会うということになります。

工事が終わればすぐにMDFに鍵をかけることが必要になるので、基本としては
この方法をとっているはずです。

でも、そもそもMDFはNTTの電話回線を引き込んでいるボックスです。
そこに光回線としてNTTのフレッツ光を引き込む場合も以前はかなり多かったのです。

つまり入居者が変わるたびにNTTの関連業者がMDFを開け閉めして回線の切り替えを
行っている、という状況がとても多くなりました。

そこでNTT関連業者が管理人や管理会社と相談をして、合鍵を作るということも
多くなったのです。

そもそも地域ごとにNTT回線の工事業者は決まっています。
集合住宅に派遣される業者は同じです。

NTT関連の業者がNTT回線のある機材の鍵を持っていても大きな問題はありません。
しかもこれなら管理人の負担も大きく減らすことが出来ます。

最近ではフレッツ光以外にも光回線が増えているので、この方法が使えないところも
多くなっているようですが。

フレッツ光を使った光回線の場合には、こんな状況もあるのです。

MDFは通信回線なら何でも使われている

今までの説明では基本的に「NTTの回線」を集めたものがMDFという印象かと。
でもMDFに集約される通信回線はNTTのもの以外でもあります。

電話回線に使われるのは説明しましたが、その電話回線がケーブルテレビ回線の
IP電話ということもあります。

当然建物にケーブルテレビ回線を引き込んでいるならMDFにはケーブルテレビ回線が
集約されているということに。

つまりNTT以外にもMDFを使うことはあるのです。
NTTの専用ではないので間違えないようにしましょう。

配電盤は高圧の電気を受けるための設備

一応勘違いしやすい「配電盤」についても調べておきましょう。
そもそも配電盤とは何をするものなのか。

最初に説明したとおり、高圧配電設備から届いた電気を受けるための設備です。
もっと簡単に言えば「高圧の電気を受けるための設備」ということになります。

そもそも電気というのは高い電圧で送電されるほどロスが少なくなるという性質があり
たくさん電気を使う施設ほど高い電圧で送電されてくることになります。

集合住宅など多くの家庭で一度に電気を使うことになるところでは効率よく電気を
送電してもらうことが必要になるわけです。

ただ高い電圧で送られてくる電気をそのまま各家庭に流すのはとても危険です。
そこで安全に送電を受けるために設備が必要になるのです。

ここで安全に高圧の電気を受け取って、それを設備内で利用できる電圧に変換して
更に必要とされるところに分配する、これが配電盤の役割です。

基本的には分電盤に電気を分割して、安全に送るための設備という印象でしょうか。
集合住宅の他にも工場や大型商業施設などでも配電盤は使われています。

一般家庭では分電盤のみ使われる場合が多い

ちなみに一般家庭の場合は外の電柱から引き込まれた電気がそのまま分電盤に行き
そこから各部屋に分配される、ということが多いです。

配電盤が使われるのは高圧で送電されてくる施設なので、一般家庭では家庭で使える
電圧での送電が行われています。

つまり電圧を変更する必要がなく、そのまま分電盤から各部屋まで送電しても
何も問題はありません。

そして分電盤には電気を安全に使うための安全装置としての役割を持っている
という場合も多いのです。

簡単に言えば「ブレーカー」や「漏電遮断器」が分電盤に設置されている機材です。
電気を分けて使っている、というのがわかりやすいかと。

MDFの場合は一戸建てでも使われることがあるのですが、配電盤を使うことはありません。
この点からも「MDF配電盤」という言い方がおかしいのがわかりますよね。

MDFと配電盤は違うものなので注意が必要

最後にまとめてMDFと配電盤の違いを説明しましたが、MDFは通信関係の集約設備で
配電盤は送電に関する設備と全く違うものです。

そもそもMDFの日本語訳を「主配電盤」と訳す場合も多いので、そこから注意が
必要になるかと。

一応現状ではMDFは「主配線盤」と「主配電盤」のどちらでも通用するという状況です。
でも通信関連の法令で「主配電盤」という言葉が使われることはありません。

設備の使われ方からも電気ではなく通信回線を集約している設備ですから「配電盤」と
訳すのがおかしいと感じるのです。

混乱をしやすいのも事実なのですが、出来ればMDFと配電盤の違いを理解して欲しい。
そして可能な限り正しく使って欲しいところです。